編集長インタビュー  パリッシュ出版株式会社 土屋和子社長 「量」より「濃さ」で成果を生む 地元主婦を組織化し、PRや購買につなげる

住宅メーカーの担当者を交えた住宅相談会を開催するたびに新築住宅が売れるという信じられない会員組織がある。高崎市を中心にフリーペーパー事業を手がけるパリッシュ出版株式会社が展開する「マイステージぐんま」だ。地元に住む好奇心旺盛な主婦と緊密なつながりを作り、数は少なくても関心度が極めて高い見込み客を臨機応変に集めることができるのが、スゴさの秘密だ。自らも現役主婦である土屋和子社長は、消費者と真剣に向き合う場を作ることが企業にとって非常に大切な時代になっていると語る。

(聞き手は本誌編集長、遠山敏之)

遠山「マイステージぐんま」が開催している住宅相談会は、集まる人数は少なくても毎回成約がでるほどの人気だそうですね。

土屋2年ほど前から始めた「マイホームラボ」ですね。会員の中から住宅に関心がある人を毎回30人くらい募って、住宅メーカーや工務店さんをお誘いし、1社25分ほどのプレゼンをしてもらうのですが、ほぼ毎回1棟ずつは購買に結びついています。

パリッシュ出版株式会社 代表取締役社長 土屋和子氏写真

月刊polish表紙写真

パリッシュ出版株式会社 代表取締役社長
土屋和子氏(撮影:乾芳江)

濃いつながりをメディアに

遠山新築住宅市場がこれほど冷えこんでいる中、なぜそんなことが起きるのですか?

土屋1つは本当に関心がある会員だけを選んでいるからです。会員は現在約7800人いるのですが、アンケートなどを使って「1年以内に住宅を買う予定がある」などの条件で選び出しています。だから、参加した人はとても真剣で、住宅メーカーの方が驚くほどです。相談会後のフォローも手厚くしています。参加者にはアンケートを実施して、「また参加したいか」などの意向を聞き、関心の高い人だけを集めて、「住宅展示場に行こう」というツアーを組んだりもしています。一般的なモニター会員と違い、とにかく濃いつながりを維持することに気を使っています。ある種のコミュニティを作り、それを住宅相談会というメディアにしているとも言えます。今は住宅だけでなく、自動車や子ども向けのお稽古ごと教室などのテーマでも、こうした会員参加型のイベントを開いています。

遠山似たような会員組織はほかにもありますが、「マイステージぐんま」がこれだけ活性化しているのはなぜですか?

土屋会員を「地域の女性生活者」に絞り込んでいることが大きいと思います。実際、会員の45%は専業主婦で、30代が55%を占めます。実際にいろいろなものを買っているリアルな消費者なんです。だから反応が強い。しかも専業主婦は比較的時間に余裕がありますから、毎日さまざまなアンケートを実施しても、結構答えてくれます。それの回答履歴はすべて保存し、「マイホームラボ」などで会員を集めるときのデータベースにしています。地元に住んでいますから、「友達10人連れてきて」とか「家族で来て」とかのお願いもしやすいですしね。

土屋和子氏写真
「会員を地域の女性生活者に絞り込んだことがポイント」と土屋氏

遠山なぜこうした事業を始めたのですか?

土屋もともとは、本業であるフリーペーパー事業の広告集稿を促進するための仕掛けだったんです。広告主は、ほとんどが地元の中小企業。広告を出しても反響がないと、継続してくれません。「だったら見込み客30組連れてきますから、広告出してください」と見栄を切って、フリーペーパー読者を集めたのがきっかけです。考えてみれば、その当時、地域に特化してこうしたマーケティング事業を展開している会社はほかになかったんです。

そこで2002年にWebを立ち上げ、会員の組織化を始めました。主婦のお小遣い稼ぎに使えるように、アンケートに回答したり、商品モニターとして参加したりすると、ポイントが貯まり、1ポイント1円で還元できる仕組みも取り入れました。

フリーペーパーのソリューション事業

遠山消費者と企業とをつなげたわけですね。

土屋そうです。やってみると、予想外のことがたくさんありました。ある通信回線販売のイベントサポートに、実際にその回線を利用している会員を募って、参加してもらったことがあるのですが、それまでイベントで成約することはほとんどなかったのに、ユーザーである彼女たちが説明員になっただけで、何十件もの契約が取れてしまいました。50万枚チラシをまいても売れ行きが芳しくなかった住宅分譲地も、我々がサポートしたら、3年間で完売するまでになっています。

こうしたことができたのも、地元でフリーペーパーを10年以上発行しているというブランドが大きいですね。女性向けの「Polish(パリッシュ)」は高崎エリアのフリーペーパーの先駆けで今21万5000部配布しています。マイステージ会員がとても濃い個人情報を提供してくれるのも、「Polishなら安心」という信頼感があるからこそです。先日、100号の記念イベントを実施したのですが、誌面で見開き2ページの告知広告を出しただけなのに、1万5000人もの人が集まってくれました。

遠山そういう意味では、「マイステージ」事業は、フリーペーパーのソリューション事業でもあるわけですね。

土屋そうです。フリーペーパー事業者が集まる会で、「マイステージ」の事例を講演したことがあるのですが、3社くらいの方から一緒にやりたいという声があがりました。そこで、「マイステージ」を全国展開することに決め、本部組織としてマイステージジャパンを設立しました。現在、北海道や新潟など全国12カ所まで広がっています。会員システムをASPでお貸しすると共に、我々が蓄積してきた運営ノウハウを提供しています。現在はエリアごとにビジネスを展開しているだけですが、これがもっと広がると、企業にとって各エリアの女性と濃いつながりを持ちながら全国でマーケティング展開ができる、これまでにないマーケティングが可能になります。企業にとってのマーケティング支援だけでなく、実際にモノを売っても面白いでしょうね。

消費者は本当のことを知りたがっている

遠山土屋社長は、自ら3人のお子さんを育てられた主婦でもあるわけですが、最近の女性消費者をどう見ていらっしゃいますか?

土屋メディアを介したコミュニケーションだけでなく、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが非常に大切になっていますね。企業にとって重要ということは以前から言われていますが、消費者自身がそれを求めるようになっていることを強く感じます。しかも、そこでやり取りする情報は、うわべだけのものではダメです。彼女たちは「本当のことをちゃんと教えてもらいたい」と考えています。実際、「マイホームラボ」でも、結構突っ込んだ話をしていますね。企業は、消費者と真剣に向き合う場を作り、生活シーンを共感できるようなコミュニケーションを取ることが必要ですね。

土屋和子氏写真
今後は主婦層だけでなく、学生やシニア層の開拓を進めていく予定で、新たなフリーペーパーの発行を始めている

土屋和子 (つちや かずこ)1955年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業。結婚後、10数年間、3人の子育てをした後、フリーペーパー事業を起業。1997年パリッシュ出版設立。2001年より、企業と女性生活者を結ぶ「マイステージ事業」を開始。2008年マイステージジャパン設立。行政の各種委員を務める一方、セミナーの講師として招聘されることも多い。

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